第30話 青木さんの話5

「色々ありましたが朝日が見れてよかったです。綺麗でしたね。」

そんなことを帰りの車の中で青木さんが話す。

「お役に立てたようで良かったです。」

人手が足りない、というワードの意味が少し違うような気もしたが。


「やはり渡良瀬さんにお声がけをしておいて良かったです。」

意味深に青木さんが言う。なにげに他の2人も頷いている。

「迂回のことですかね?

 たまたまでも上手くいって良かった、と思ってますよ。」

昔からなんというか勘のようなものが働く方ではあるのだが。


「上手くいくときと、上手くいかないとき、

 分岐点はどこにあると思いますか?」

抽象的なことを青木さんが問いかける。たぶん、今回だけの話ではないのだろう。

「運ですかね?」

なんとなく、あたりさわりのなさそうな言葉で返してみる。


「人です。」

「人…ですか。」

「はい。誰がやるか。誰とやるか。誰が相手か。全て人で決まります。」

「なんとなく、わかるような気はします。」

「やはり渡良瀬さんにお声がけしてよかったです。」

もう一度同じことを青木さんが言う。

まるでその言葉を噛みしめるかのように。


風の吹く松竹梅

小説書いてます。 すべて架空の世界の出来事。

0コメント

  • 1000 / 1000